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◆介護を詠む
愛と言わず愛を見せる。
介護される者の日々が、苦労や不幸だけではないことを、これらの俳句は証明している。突きつけられた負の状況に真っ向から向き合い引き受けたことによって、彼は確かに大きくなった。
高齢者が人口の何十パーセントを占めているのか詳しくは知らないが、あぁ人生は、あぁ加齢は、そして病は、そんなに怖い嫌なだけのものではないのかもしれない。身を以て、それを知らせてくださっている句集である。
(解説より 池田澄子)
[ブログ「編集日記」2013年11月28日]
[ブログ「編集日記」2013年12月10日]
◆池田澄子選
病む妻と庭花火して夜更しす
芍薬の散るなら妻の眠る夜に
飼へば死に飼へば死にして金魚鉢
原爆忌テレビ終れば終るなり
萩折りて萩の仲間にむち打たる
晩秋や三十キロの妻重し
湯タンポを入れて散歩の車椅子
小春の日座敷で妻の髪を切る
三十歩歩けた妻にポインセチア
書初に幸福と書く老人会
マフラーを二人で捲けば死ぬかもよ
妻を撮るその時風花賜りぬ
*
[やぎぬま・しんじ(1935〜)一滴会会員]
解説:池田澄子
装丁:和兎
四六判並製カバー装
164頁
2013.12.01刊行