[立ち読みする]
◆第一句集
日の差して皆歩き出すさくらかな
こんな景は誰もが見ているが、仲々句にはまとまらない。それが一句として立ち上るのは心をこめて写生をつづけると、ある時恩寵のように、言葉となってまとまるものだと私は思っている。
(序より:深見けん二)
◆自選十句
アムールの大河の凍てて流れ来る
山茱萸の空へ莟の弾けさう
日の差して皆歩き出すさくらかな
最果ての島の若葉や殉教碑
長刀鉾近づくほどに撓ひけり
列島を焦がし八月来たりけり
欠けやうもなき満月のしじまかな
武蔵より甲斐の果てまで鰯雲
見晴らしの関八州や草紅葉
被さりし樹々の昏きに鴨浮寝
*
[なかじま・あつこ(1936〜)「花鳥来」会員]
序:深見けん二
装丁:和兎
四六判フランス装グラシン巻
230頁
2013.11.22刊行