[立ち読みする]
◆第一句集
川名さんの父はかつて「鷹」の俳人だった石渡桃里。六十四歳で惜しまれつつ亡くなった。川名さんは父と俳句の話を一度もしなかったことを悔みつつ、父の享年になって俳句を始めた。
「お前もこんな句が作れるようになったか」、天上で莞爾とされる父の声が聞こえてきそうな句集である。
(帯より 小川軽舟)
◆小川軽舟抄出十句
ゑのころに触るる長針花時計
朝曇潮の香重しうつたうし
春隣夫の机を貰ひけり
いつしんに燐寸擦る夢台風来
シリウスの傾く夕野わが昭和
ちちははの墓へ近道桃の花
明日壊す家の戸締り百日紅
ひぐらしや握りかへせぬ手の温み
しぐるるや父の句集の函表紙
一湾の灯火列く余寒かな
*
[かわな・つるの (1938〜)「鷹」会員]
序・帯文:小川軽舟
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
148頁
2013.10.31刊行