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◆第一句集
投げられて泣かぬ子となり寒稽古
柔道か相撲か。負けると悔し泣きしていたが、今ではすっかり我慢強い子になった。
山茶花や使はぬ井戸の水溢れ
井戸水で生活していた昔から井戸を見守ってきたかのような山茶花。
神饌の貝の舌出す海開き
おごそかな神事の最中に「舌出す」とは何事ぞ、と思わせるユーモア。
そのほか身近な日常生活の中に詩を発見し、まことに風土色ゆたかな一巻。
(帯より 鷹羽狩行)
◆若井新一抽出十句
干柿で窓を鎧ひて平家村
転勤を幾度も重ね古雛
神饌の魚の目動く海開き
懸大根とりて米山近くなる
金縷梅や歩きはじめて婚の列
激震の地割れを照らす夏の月
荒海へ竹刀突き出す寒稽古
遠き子を客に迎へて松の内
良寛像かこむ土筆の数知れず
鰤来るや浜に飛び交ふ胴間声
*
[おおしお・ちよ (1927〜)「狩」同人]
鑑賞三句・序句・帯文:鷹羽狩行
跋:若井新一
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
202頁
2013.09.26刊行