[立ち読みする]
◆第12回北陸現代詩人賞・奨励賞受賞!
◆第一詩集
本詩稿を整えた今、詩の言葉は、永い間、私を待っていてくれたように思える。
(あとがきより)
◆収録作品より
南風吹く
四月の朝
王城の南壁の下
しゃぼん玉刑は執行された
─刑せられたるは王国にその名隠れもなき詩人
しゃぼん玉に封じられる時
彼は典獄に王の言葉をつたえられた
「わが寵愛する詩人よ!
汝はいつよりか己の好きなままを歌うだけの放縦な詩人になり果てた。
しかのみならず余の制止の命に従わず歌いつづける。
ならばこれより大空へ行き、存分に歌うがよろしかろう。
わが哀れな詩人よ!
身を大切にせよ!
歌えば歌うほどにしゃぼん玉の中の大気は汚れる。
己の身で学ぶがよい
長く生きるために沈黙しなければならないことを。
試みるがよかろう
黄泉に到りてもなお汝に歌いつづけるべき歌があるか否かを。」
太鼓が叩かれた
しゃぼん玉が昇る
合唱隊が葬り歌を歌い始める
彼が宮廷詩人の誉れの座にあった時
王命を受けて献上した世にまつろわぬ人どもへの葬り歌を
(しゃぼん玉の中の世界はしゃぼん玉の中の世界
しゃぼん玉の外の世界はしゃぼん玉の外の世界
中から外に出ようとすれば 御空に墜ちて沈むだけ)
*
[たけのこしはじめ(1939〜)「さちや」同人]
装丁:和兎
菊判変形上製函装
106頁
2013.09.20刊行