◆第一句集
選ぶとは選ばないこと。
あぶない幻影にそっと寄りそってみる。
それはまるで、フライング
ぎりぎりのまぶしさ。
合せ鏡に映った影は、虚実皮膜の真実かも―
(帯より:行方克巳)
◆行方克巳抄出十句
沈むとも浮くとも思ふ春の月
みそつかすなりに駆けゆけ雲の峰
猫の子や選ぶとは選ばないこと
危ふきに近寄つてみる春の宵
フライングぎみのまぶしさ更衣
この星の舳先に立ちて夕焼見む
風のいま転調したり水の秋
秋の暮合せ鏡に何かゐる
秋の暮母さんは叱るだらうか
恋といふ至上命令鳥交る
*
[せきね・そら(1964〜)「知音」同人]
序:西村和子
帯:行方克巳
装丁:和兎
四六判並製小口折表紙
194頁
2013.09.07刊行