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◆ふらんす堂編集日記
◆第一句集
尋ね家は地図の合はせ目揚雲雀
『蜆のつぶやき』の一句一句に、今村氏は、蜆に仮託し、蜆に己を貶めて、ひねりを加へて俳句世界に遊び呟いてみせたのである。一たび活字となつて世に出された瞬間から、句集『蜆のつぶやき』は、一文学作品としての価値をもつて本人の意思にかゝはりなく評価されることになるであらう。
(序より 笙鼓七波)
◆自選一〇句より
テレビいま田舎の古刹去年今年
春立つや色鮮やかに新刊書
一匹の蝌蚪の国なるガラス瓶
草毟る腰のラジオの「九条」論
海猫に浜を返して夏惜しむ
稲妻の走り忌中の簾をたたむ
木馬みなまどろんで居る残暑かな
卓袱台に飯と味噌汁文化の日
襟裳晴れ海境閉ざす冬霞
路地将棋負けて帰るか冬帽子
*
[いまむら・ひろし(1933〜)「風叙音」同人]
序:笙鼓七波
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
188頁
2013.06.4刊行