◆私家版
帝国ホテルで月に一度、三時間ほど俳句について語らせていただいたことは、私にとっても忘れ難い経験である。萩の会がここで打ち切りになることは、さびしいことに違いないのだ。生涯のかけがえのない思い出とさせて頂きたい。(「序に代えてより」:倉橋羊村)
◆収録作品より
蕗の薹苦みの旨さ好む齢 (岩井庸子)
ともる灯もなき路地裏の桜散る (掛川憲子)
路地裏に下宿屋残る一葉忌 (倉橋幸子)
しつけ取る光琳写しの初袷 (後藤貞子)
人込みの中の一人の春日傘 (渋谷絢子)
夫病めば心に秋の風吹けり (清水由利子)
俗名に優る名は無き秋彼岸 (下村喜久子)
老いてなほ自分探しや春愁ひ (野村トミ子)
夫の忌を修めてひとり冬座敷 (峯島孜子)
我よりも我を知る夫春霞 (向井弘子)
群れ咲くも寂しさばかり花八ッ手 (弓削麗子)
うたた寝の姑なりそつと毛布かけ (渡辺良子)
若者の去りし池辺に秋の蝶 (新井澄子)
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序に代えて:倉橋羊村
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
220頁
2013.05.11刊行