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◆ふらんす堂編集日記
◆第二句集
もう会えないと思っていた光部さんにこの句集でまた会うことができた。その喜びで私の胸はいっぱいだ。
風花やいづこまで夢運ばるる 美千代
病気を理由に「鷹」を離れた光部さんの夢は生まれたての「汀」に運ばれて最後の花を咲かせていた。藤田湘子に見出されたその天稟が惜しみなく薫るなつかしい句集である。
(帯より:小川軽舟)
◆井上弘美 抽より
息こめて笛高鳴れり雪解光
わが書簡炎天の矢として放つ
こちら側には眼の映りサングラス
銀漢をこぼれてきたる赤ん坊
背泳の背のすべりゆく蒼き星
未来まで届く風船ふくらます
鳥渡る流砂の研げるガラス片
風花に音なき星の自転かな
雛しまふ手を丁寧に洗ひけり
野を焼きて明日疑ふこともなく
*
[こうべみちよ(1957〜2012)]
跋:井上弘美
装丁:君嶋真理子
四六判上製函装
224頁
2013.05.17刊行