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◆ふらんす堂編集日記
◆第一句集
月光の巨石に墜つる響かな
生まれ育った大和の地への鎮魂曲とも言うべきこの厳かな一句が生まれてから、速見さんの作品世界にこの世のすべてを包み込むような優しさが増したように感じる。その優しさを慈しみと言い換えてもよい。(帯より:小川軽舟)
◆小川軽舟抽出より
鳥渡る吾をはぐくみし二上山
父眠る当麻は雨や牡丹の芽
厨事麦湯冷しに始まりぬ
多武峰春満月を押し上ぐる
山祇に火を供へけり狐罠
檻狐顔をかくしてねむりをり
拭き上げし濡縁に飛花とどまれり
沈丁や妻に親しき勝手口
大き手に包まれてゐる霜夜かな
月光の巨石に墜つる響かな
*
[はやみあやこ(1932〜)「鷹」同人]
序:小川軽舟
跋:奥坂まや
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
204頁
2013.05.11刊行