[立ち読みする]
◆ふらんす堂編集日記
◆第一句集
朝顔の百花の奥に納税課
朝顔に囲まれた役所は、まるで花園のようだ。納税者の心もなごむ。
爽やかに農継ぐといふ子の茶髪
見かけは現代っ子だが、都会へは行かず、家業を継ぐという。しかも快く……。
用のなき部屋灯しおく寒夜かな
使わない部屋にも明かりを点けておくのは、人恋しさからだろう。
日常生活を丁寧に詠み、慈しみの心が率直に伝わってくる句集である。
(帯より:鷹羽狩行)
◆遠藤若狭男抽出
囀りを寿ぎと聞き笑みかへす
いもうとを諭し天道虫放す
二歳には二歳の主張つくしんぼ
朝顔の百花の奥に納税課
夫逝くも夫の席ある春炬燵
まひまひのまひまひせねば流さるる
風立てば衣擦れの香を藤袴
減反を強ひられ蕎麦の花真白
白玉やうれしきときも涙出て
うつくしき文桐箱へ秋惜しむ
*
[わだてるこ(1940〜)「狩」同人]
帯文/序句:鷹羽狩行
跋:遠藤若狭男
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
208頁
2013.01.23刊行