◆第四句集
俳句に、なぜ私は惹かれたのか―。
それは正しく、俳句が定型詩だからである。俳句が持つ定型という構造自体が、表現としてのリアリィティ獲得のための必然的関係性を内包していると考えたからだ。
(帯より:著者)
◆自選十五句
早春の岬や斧を置くごとし
地球儀のシベリア青し二月かな
原子炉に蝶の白さを見失ふ
三鬼忌や背後にエレベーター開く
満開の桜の中の弾薬庫
夕焼けは色鉛筆の匂ひせり
螢の夜濡れて熱もつオートバイ
船中に真水のタンク雲の峰
硝子器の映り合ふなり夜の秋
台風接近天文台とメロンパン
卓上にありし葡萄の日暮れかな
校庭に残る白線秋の風
三島忌やパンのレーズンばかり食ふ
地を擦りて戻る巻尺冬の暮
チェルノブイリの雪女から来た手紙
*
[やまもとさもん]
装丁:君嶋真理子
菊判小口折表紙
126頁
2012.12.24刊行