◆あとがきより
私の住む京都府亀岡市の中心には、明智光秀ゆかりの亀山城址がある。その中には日本古来の野草を中心とした植物園がある。絶滅の心配のある万葉植物など約一〇〇〇種が植栽されていて、家族の散歩コースになっている。ただ夏には蚊が多くてゆっくり散策できない。そんな気に入りの植物園の入り口付近にはあおだもの木が二本あり、揺れながら我々を迎え、そして見送ってくれる。
（著者：小倉喜郎）
◆収録作品より
靴脱いで揃えて春の逆上がり
胃カメラが入っております牡丹雪
切り株が道をふさいでいる朧
母の日の受話器が上がったままですよ
父の日の机を歩く緑亀
古池に蛙飛び込むお尻から
蚊を叩くあおだもの木が揺れている
湯冷めして思い出せない本能寺
一撃必殺瓦十枚天高し
君の背中にブロッコリーが付着している
＊
[おぐらよしろう（1965〜）「船団の会」「玄鳥」所属]
装丁：和兎
四六判上製カバー装
156頁
2012.12.01刊行
