◆融通無碍の作風
緑蔭や鳩に聴かせて辻楽土
人ではなく、鳩に囲まれた辻楽土にただようペーソス。
紫はあやめのための色かとも
紫という上品な色の原点は、アヤメにあったと思った。
たしか下戸と聞いてをりしが新走り
飲めないずの人が、一杯二杯……。まさに”下戸と化け物は無い”。
エッセイストでもある草野准子さんの作風は、まことに融通無碍だ。
(帯より:鷹羽狩行)
◆片山由美子抽出
思はざるときのしづくや吊忍
陶片のごときをこぼし冬薔薇
入院の支度のひとつ髪洗ふ
はばたけば白炎めきて大白鳥
待ち人の来る噴水の向うより
日かげれば水のむらさき菖蒲園
振り向かぬ人を見送り十三夜
灯を消せば盆梅しかと香りけり
草餅をまるめ手のひらよろこばす
ふぶくためひたすらに咲き山ざくら
月光を折りたたみつつ波がしら
身の丈のほどを巻き上げ秋簾
*
[くさのじゅんこ(1937〜)]
序句・鑑賞十句・帯:鷹羽狩行
跋:片山由美子
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
188頁
2012.11.21刊行