◆第一句集
俳句が好きになったのは、民俗音楽学者の小泉文夫先生のお蔭と思っている。
日本音楽の基礎的な理論としての音数律の授業がたまらなくおもしろかった。
ピアノの練習も対位法の課題も放りだして、音数律――言葉のリズムの資料をさがしまわった。時を経て俳句にたどりつくことができたのは実に仕合せなことであった。
(あとがきより)
◆収録作品より
森閑と雲荒るるなり捕虫網
田の中の一枚だけの太藺の田
爽やかに補助線引けり幾何教師
怒つたやうに急須の詰まる秋の暮
初氷父の硯をもらひけり
笹子鳴く吉備津の巫女はおばあさん
初春や鉄腕アトム老いもせで
金貸して金尽きにけり鳥総松
苗木売月のやうなる花咲くと
行く春の兎座の尾へ帰るなり
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[きのしたのの(1947〜)]
装丁:君嶋真理子
四六判変型上製カバー装
202頁
2012.11.27刊行