◆第五歌集
一枚のチコリ剥がしてその舟にあなたを乗せむ すこし揺れます
「もうひとつやね」という言葉が残されて寂しいと思っていた。
時間が経つにつれて一生励ましてくれると考えることにした。
記憶のなかの声はいつでも再生できる。
◆帯より
大きな手、と笑つて比べし小さな手氷雨のなかにふと思ひ出づ
枯野といふ舟のつもりと言つたなら呵々と笑つて乗り呉るるかも
新たなる言葉を貰へずに一生をもうひとつやね、と生きてゆくのだ
日の経てばだんだん寂しくなるばかり記憶のなかのこゑと対話す
透きとほる羽から発する浄きこゑ歌へかなかな一生はみじかい
*
[さとうなみこ(1943〜)]
装丁:和兎
A6判フランス装
236頁
2012.11.22刊行