◆風土に根を下ろす
白山をはるかにしだれ桜かな
しだれ桜越しに残雪の霊山を望んだ。遠近法が見事。
糶る声の徐々に高まりずわい蟹
糶市の高まる熱気とそれを取り囲む寒気まで感じられる。
寒禽のひとさわぎして又騒ぐ
鳥たちの餌の奪い合いが、ひと騒ぎではおさまらない冬。ほかにも<ひでり田の窪みになにか生きてゐる>など、風土に根を下ろした人間味にあふれる一巻である
(帯より:鷹羽狩行)
◆岬雪夫抽出
白山をはるかにしだれ桜かな
いちはやく梢を張つて春岬
朝倉の末裔なるか春田打つ
家々に灯り点けよと青葉木菟
青苔に青苔かさね永平寺
鉄鍋に炎立たせて夏料理
越前や時雨とともにひと日暮れ
糶る声の徐々に高まりずわい蟹
冬の雷息ひとつして母逝けり
母の忌や母のもんぺを妻がはき
*
[みかみゆきお(1940〜)「狩」同人]
序句・帯:鷹羽狩行
跋:岬雪夫
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
184頁
2012.11.11刊行