◆第七句集
頬骨に保たれてけふ春の顔
生きて在る実感を、その生の温みをもっと詠ってゆきたいと思う。
(著者あとがきより)
◆自選十二句より
草いきれ深入りすれば消さるべし
強慾な七夕紙のぶら下がり
いもうとに転移の病初化粧
病室を揚羽の骨のぎくぎくと
姿あるあはれのわれが初鏡
足音の遠くへ去りぬ昼寝覚
白塗りの妓が過ぎやがて寒気過ぐ
退院の一歩に娑婆の霜柱
梅咲くや昔の電話ちりりちり
人も木も皮につつまれ涅槃西風
*
[やまがみきみお(1931〜)「南風」代表]
装丁:和兎
四六判上製カバー装
230頁
2012.09.25刊行