◆第一句集
花冷や手話の間あひを見つめ合ひ
間合いという距離感、それは相手の心情をうかがうに必要な空間であると共に互いに見つめ合う緊迫の時間がそこにある。表情の背後にある微妙な気配を「花冷」は伝えてあますところがない。季語の配慮に揺るぎないものを感じる句である。
(序より:山上樹実雄)
◆自選十句より
花冷や手話の間あひを見つめ合ひ
鑿あてて氷塊くもる獺祭忌
すかんぽを折るや裸足で駆けしこと
寒晴や肩いからせる服を着て
こゑあげて青梅どつと甕に入る
気負ひたる肩を宥めて更衣
仕上がりの畳一枚夏つばめ
起き直ることに全力兜虫
面伏せる少年となり栗の花
七十の息に応へてひよんの笛
*
[たけださじこ(1933〜)「南風」同人]
序:山上樹実雄
装丁:和兎
四六判上製カバー装
172頁
2012.09.15刊行