◆第二句集
人の輪の大きくなりて春の笛
この句の持っている自然さ、やさしさに注目する。笛吹く人は、小ぢんまりと場を整え、やがて試すように吹きだす。笛の音にひかれて少しずつ輪が広がっていく。
(序より:坂口匡夫)
◆自選十句より
山門を開く海棠明りかな
初凪や海に展きし大鳥居
全山に沁む一寸の蝉の声
島の灯のまたたき返す夜の秋
秋灯下ひとりひとりの卓ありて
藤棚のひと深海の魚のごと
ふるさとのこと語らうよ吾亦紅
春近し胸ふくらます鴨の列
地に還るとき躍るなり寒の水
梅咲いて絵馬百態の祈りかな
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[おおみなみひろし(1924〜)「テレホンタイムス」主幹 「鹿火屋」同人]
序:坂口匡夫
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
208頁
2012.09.15刊行