◆精選俳句叢書「花」シリーズ
酒屋にも洋食屋にも燕かな
句集名の由来となった作品である。身辺詠に注がれることの多かった作者のまなざしが「燕」の飛翔にも似てさらにはるかな時空へと広がりはじめている。このことを作者とともに喜びたい。
(序より:藤本美和子)
◆自選十五句より
夏野来て子ら草になり風になり
母を待つ子の掌の中の木の実かな
学校の胡瓜の太く曲がりたる
手の内にジョーカーのある冬籠
捕虫網秩父の風をすくひけり
きさらぎや鳥の翼の白き紋
母ありて南天の実の色づきぬ
酒屋にも洋食屋にも燕かな
馬鈴薯の花に雨降る参観日
セーターより白き兎を抱きにけり
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[たちばないずみ(1963〜)「泉」同人]
序:藤本美和子
栞:仁平勝
装丁:君嶋真理子
四六判並製小口折表紙グラシン巻き
174頁
2012.09.15刊行