◆第三句集
しづかにも花屑の上風ありぬ
もの静かな女性が、微風のような句を作り続ける。この井アデンティティが、著者の奇を衒わぬ静謐な結界を示しつつ、揺ぎのない感性の結集が昇華されている。
(帯より:鈴木鷹夫)
◆自選十二句より
水の影水底にあり椿落つ
正装で乗りたきものに花筏
衣更へてすぐ昼火事に遇ひにけり
髪洗ふサザンクロスに近くゐて
あをあをと水が育ちぬ螢の夜
祇王寺に二十歳のわれを探す秋
うたた寝の夫へ小鳥の来てをりぬ
鞦韆や腹立つ時は立つて漕ぐ
冬菊や終の別れは手を振らず
埋火は父の温さや夜の雨
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[なりたきよこ(1936〜)「門」同人]
帯:鈴木鷹夫
栞:鳥居真里子
装丁:和兎
四六判製カバー装
168頁
2012.07.30刊行