◆第五句集
てのひらに虹立つ思ひ雛あられ
手のひらに載せた雛あられの彩りの美しさを、大きな空間にまで広げた。
服はぬもののなかなる海鼠かな
海鼠の姿を、服従せぬものの最もたるものと見て、その本質に迫っている。
生者のみとは思はれぬ盆踊
今日では娯楽となったが、これは本来の供養のための雰囲気を残す盆踊り。
このような深い洞察力は、長年の真摯な句作によって培われたものである。敬服してやまない。
（帯より：鷹羽狩行）
◆鷹羽狩行抽出より
歌がるたやむごとなきを撥ねとばし
寒鯉の一擲おのれ鞭打つや
雨乞の火を消す水を担ひ来て
錯綜といふ田作りの絡みやう
ところ得て坐す冬瓜と火消壺
年玉の一袋まだ帰国せず
手暗がりほどの憂ひや春燈
くちばしの重さによろけ鴉の子
仕留めたる山を後ろに牡丹鍋
一弁を歪めてひらく寒牡丹
*
[たかさきたけよし（1928〜）「狩」同人]
帯：鷹羽狩行
装丁：君嶋真理子
四六判フランス装函入
198頁
2012.05.22刊行
