◆第一句集
停泊の船に灯の入る朧かな
『天かけて』の一集を通読しての印象は、万有の山川草木を素材としながら晦渋苦悶の句は見られず、生真面目にして温雅な作品という感想である。
(序より:山上樹実雄)
◆自選十句
天かけて淑気や那智の滝しぶき
春日傘上げて植木を糶り落とす
葦負女夕日引きずりゆきにけり
餅花や女の酔は耳朶に
ゆれながら大皿沈む泉かな
明日あるをつゆ疑はず干蒲団
火の玉のへろへろ高む花火かな
紙鍵盤ぱらりと落ちし曝書かな
雪柳佐保路明りと申すべし
目刺焼く叫べる口の焦げにける
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[むらやまみちよ(1935〜)「南風」同人]
序:山上樹実雄
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
205頁
2012.05.22刊行