◆第一句集
冬の夜のラジオ呟く「ローマは雨」
冬がいい、夜がいい、ラジオがいい、呟くがいい、ローマがいい、雨がいい。こんな平凡な言葉たちがこれほど緊密に隊伍を組んで秘かに静かに人の心を癒やしてくれるとは迂濶にも気がつかなかった。
(序より:辻田克巳)
◆自選一〇句
定期買ふ四日の列に並びけり
桜前線老ノ坂越えて来し
日当たりがよく二階にも吊し柿
秋風に追ひ越されたる交差点
みせばやの咲いて寓居の長かりし
土色となりてきちきち土にゐる
留守電を戻し聞きゐる事務始
ゆたゆたと音す昭和の扇風機
会ひたしとあれば会ひたくなる賀状
冬の夜のラジオ呟く「ローマは雨」
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[たにがわあきや(1939〜)「幡」星辰集作家]
序:辻田克巳
装丁:和兎
四六判上製カバー装
230頁
2012.05.28刊行