■スピカで神野紗希さんが鑑賞を書かれています。
柚子一つ机にありて落ち着かず
ごはんつぶつけて寝る人夏の雨
◆さりげなく、ゆたかに
どの木にも雨の降り出す秋の寺
この句集の基調には、無理をせず、淡々とわが俳句をつくってきた吉田成子の力のほどがゆたかに流れている。
(跋より:宇多喜代子)
◆自選十五句より
ごはんつぶつけて寝る人夏の雨
自然薯のどうでもよしところがりぬ
声低き暮しに水の澄みゐたり
厳寒の声をつつしむ古梅園
寒くなりさうな門灯ともしけり
衣更へてより何事もおほざつぱ
父に似て焦げ飯が好き桜咲く
ゆふがたに子らの集まる冬木かな
用なくて二階へ母の来る日永
あのあれで通じる会話日向ぼこ
*
[よしだしげこ(1936〜)「草樹」発行人]
跋文:宇多喜代子
装丁:和兎
四六判上製カバー装
184頁
2012.05.28刊行