◆飛び立った言葉たちはどこまででも行ける
初めて読んだ梨々さんの詩は「ロシア」だった。二〇〇七年だ。行から行へ軽やかに飛び移ってゆくリズミカルな勢いとスピードのなかで、瑞々しく澄んだ光が眩しいほどなのに?き出しの肌に風が触れてひんやりするような、さみしさとあかるさに満たされた広い場所にぽんと連れ出されたような心地がした。
(栞より:川口晴美)
◆同じ空におおわれるまで
「何も持っていなかったことを誇りに思うよ、忘れたことに斜めの線を引いて、木琴を叩く。」(「春雷」)─。忘れがたい詩行を引いた。この言葉に「しあわせはからっぽでした」という小さな告白が添えられたとき、埋める何かを必要とせず、喪失が喪失だけの力で立っている光景を見た。それは私たちの最終的な望みだと思える。そんな稀有な力を、全篇で透明に囲うように浮き立たせた詩集だ。
(栞より:杉本真維子)
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[なかむらりり]
栞:川口晴美/杉本真維子
装丁:和兎
B6判ペーパーバックスタイル
82頁
2012.04.11刊行