◆第三句集
『石垣』『白梅』につぐ第三句集『急須』。それぞれの句集には、人生の山河が深く彫琢されている。わけても母上との永別は、自己との対峙を迫るもの。旅吟に身辺詠に、独自の感性を徹した個性的な諷詠を構築している。詩情豊かである。『急須』に込めた愛と創造の詩精神は、爽やかな叙情の光域を拓いて、自在な昇華を生んでいる。
(帯より:落合水尾)
◆落合水尾抽出
花ぐもり今日返却の鍵の束
野を愛し野に住むひとり天の川
魂の真中を滝落ちにけり
まくなぎのついてくるならそれもよく
一川の海へのび出すさくらかな
秋うらら急須の蓋に穴一つ
草の花もう母がりといふはなく
妹よ雪渓はいま明けのいろ
むじな藻のそれといはれてみれば花
春隣水まんだらの夕とばり
*
[かわのくにこ(1935〜)「浮野」編集長]
帯:落合水尾
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
202頁
2012.04.17刊行