◆精鋭叢書シリーズ:雪
小春日やこはれずに雲遠くまで
美佐さんの句は声高にはしゃぐことはなく、おおむね静かだ。しかし決して脆弱ではない。じっくりと命の根を見詰めているがゆえの静けさなのだと思う。
(帯より:山西雅子)
◆自選十五句より
牡丹雪空の真ん中より降れり
春の雲欅にかかりては離れ
紅椿散り敷いてをり触れ合はず
咲きさうな桜ゆつくり日の沈む
青葉闇からまつすぐに鯉が来る
黒南風や行き処失ふ藤の蔓
初蝉の声日当りて遠きまま
雨弾く腕四萬六千日
教会の木椅子八月始まれり
秋風や甲冑ここに集ひ来し
*
[しばたみさ(1963〜)「白露」同人]
栞:山西雅子
装丁:君嶋真理子
四六判並製カバー装グラシン巻
208頁
2012.05.01刊行