◆第一句集
いつも来てけふ咲き満てる薔薇の垣
〈俳句は生活の裡に満目季節をのぞみ、蕭々又朗々たる打座即刻のうた也〉。石田波郷がこういったように、生活の中で季節を諷詠する俳句は、これからも田中遥子さんのかたわらにあるだろう。
(序より・石田郷子)
◆自選十五句より
麗日の公園の柵のり越えむ
軽鳧の子を数へ直して九羽かな
あの大き森のみどりに入りゆかな
たつぷりと余りし苗のそよぐかな
電線の椋鳥を見てゐる膝毛布
梅の香や理髪店くるくるくると
雲の峰ぎよぎよしぎよぎよしと鳴いてをり
湧き水のこぽと呟く雪ばんば
紙漉の仕事終ひのフォークギター
昼食のアップルパイや忘れ雪
*
[たなかようこ(1931〜)「椋」会員]
序:石田郷子
装丁:和兎
四六判並製カバー装
180頁
2012.04.23刊行