◆第一句集
縦書きの詩を愛すなり五月の木
俳句というリゴリズムを尊重し、しかし一方ではそれから食み出す“覚悟”。“可能性”と言い替えてもいい。彼には定型に揺さ振りをかける、かけたいという野心が最初からあった。
(帯より:中原道夫)
◆自選十五句より
さいごまであたまの味の目刺かな
えんぴつ一本どれだけの蝶描けるか
鮑うごく心が這つてゆくやうに
ぼうたんの手前に風の止まりをり
跫音に敏し草刈機の男
螢狩鉄路の上を歩みけり
さくらんぼ夜明けのやうに酸つぱくて
四万六千日東京タワーにも寄りて
馴れ鮓の馴れて近江を遠ざかる
家族とは濡れし水着の一緒くた
*
[こいけやすお(1956〜)「銀化」同人]
序・装丁:中原道夫
跋:櫂未知子
A5判変形上製カバー装
214頁
2012.04.11刊行