◆第一句集
金谷洋次君の俳句の特性を言えば、大きくは、智性を備えた市民の明るさということだと思う。まず対象へのひかれ方だが、行動が先にある。手ぶらで行動、その中から発生した感動が俳句を生む.初感を最後まで大切にする。それは一方に季節からの授かりものといった心象を大切にもつ故とも思う。
(序より:斎藤夏風)
◆自選十句
ゆつくりと波音届くさくらかな
天上に父の座ひとつ朴の花
コロッケが良く売れ田端日の盛り
寝ねて聞く波の近さや盆帰省
子の話ばかりの妻と良夜かな
長き夜や愛する者はみな静か
近江へと辿る小舟や小夜時雨
父の咳すこし遅れて母の咳
働いて働いてけふ雪の荼毘
父と子の校歌は同じ卒業す
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[かなたにようじ(1951〜)「屋根」同人]
序:斎藤夏風
跋:深見けん二
214頁
2012.01.27刊行