◆精鋭俳句叢書
梅雨寒やことに陸橋渡るとき
「陸橋」を渡りながら、作者はこの三十年の月日をどう振り返っておられるか。まだまだ若い藪柑子さんが、今後どのように人生を歩まれ、どのような句を詠まれるか、洵に楽しみである。
(序より:本井 英)
◆自選十五句より
桟橋に蟹の乾ける島の秋
石積に日が照りながら春の雨
野路の秋どこまでも行けさうな気が
諏訪橋と鍛冶橋とある村の冬
ループ橋巻きついてゐる秋の山
かたばみのいつでも咲いてゐる黄色
水鳥と川と流れてゆけるかな
陽炎のなかの南方郵便機
蛤の大蛤の篩かな
帰らないラヂオゾンデを春風に
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[おざわ やぶこうじ(1962〜)「夏潮」所属]
序:本井 英
栞:岸本尚毅
装丁:君嶋真理子
四六判並製カバー装グラシン巻
120頁
2012.01.20刊行