◆第一句集
初夢や楼蘭の砂掌にこぼす
師事十五年で藤田湘子は亡くなった。しかし、それからの三浦さんの作品は、湘子への思慕を強めながら、かえって自在さを増したようだ。表題作としたこの句は、師の〈黄沙いまかの楼蘭を発つらんか〉に唱和して、師の喪が明けた新春の再出発を言祝ぐように生まれた。師弟の心が一つになって、想像力を羽ばたかせたのだ。
(序より:小川軽舟)
◆小川軽舟抄出
地駄曳きの馬三頭や春の山
戸を外し次郎左衛門雛飾る
霙るるや黒猫のゐる千代紙屋
秋蝶の風に抗ふ早瀬かな
浮草を水に見しのみ光秀忌
初夢や楼蘭の砂掌にこぼす
さくらさくら忽と女でありしかな
みちのくの青山中やかたつむり
トラックに新藁の嵩岩手山
野火はしる白河の関まだ見えず
*
[みうらゆりこ(1930〜)「鷹」同人]
序:小川軽舟
装丁:和兎
四六判上製カバー装
178頁
2012.01.17刊行