◆郷土愛に満ちた一冊
ひとところ韋駄天走り青田波
出口なき青田にひと日四つん這ひ
前句――微風が吹き渡っている青田の中の例外的な一か所に焦点をあてた句。後句――「出口なし」の鋭い把握が、農作業の過酷さを伝える。
(帯より:鷹羽狩行)
◆執木龍抽出
白鳥の水ひつぱつて飛び立てり
咄嗟にはゆかぬ会釈や田植笠
水喧嘩らし聞きなれし声と声
はるばると来て氷瀑に長居せず
雲のなきことの退屈あめんばう
みづからを問ひつめて蓮枯れしかな
またもゆるびし筍の括り縄
菊師来て与一の弓に矢を番ふ
力抜くことを覚えて子亀浮く
初日待つ太平洋の端を踏み
*
[おがわみのる(1934〜)「狩」同人]
序句・鑑賞七句・帯:鷹羽狩行
跋:執木 龍
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
190頁
2011.01.17刊行