◆第一句集
いきいきと蒲公英のきん明日あれな
あの東日本大震災から九日目、心臓発作で初めて救急車のお世話になった。そんな頃目にした蒲公英のきんの輝きは希望そのものに思えた。思わずと。
被災地のすべての人々に。私の上に。
◆自選十句
佐保姫のきむかふスピカのぼる刻
遺されてピアノもつとも冴返る
淡墨桜ふといにし世に居るやうな
すかんぽの風に吹かれてうらがなし
武蔵野に仮寓のむかし桑若葉
水攻めの城址を茅花流しかな
瓜番の爺のおもかげ笠智衆
とんぼ玉涼しほむらの痕もなし
銀杏散る神のことばの降るごとく
若き日の間借りの暮し花八つ手
*
[ながみるりそう(1941〜)「繪硝子」同人]
序:和田順子
跋:下鉢清子
装丁:君嶋真理子
四六判変形フランス装
150頁
2011.12.01刊行