◆第一歌集
一村さんに私は「これは第一歌集。しかし次に出す歌集も第一歌集、という気持ちで立ち向かいたまえ」と敢て言おう。もちろん、「この第一歌集、おめでとう」ということばを、しっかりと添えて。
(跋より:橋本喜典)
自選七首
怠け居しをわが振り返り米をとぐ手に力入る怒れるごとく
志かならず果さん胸に手を置きつつ命の残りを思う
わが心よ奮い立ていまやらざれば汝が人としての値打ちは無きなり
生皮を剥ぐ痛みもて言葉出でよと心の奥をじっと見つめる
さむいねと誰もいない部屋で言い独語に驚き台所へ立つ
許されて今日を生き居る己なり心つつしみ炎天下を行く
運転手がディーゼル車から乗り出して線路夫と語る夏の鉄橋
*
[にしいっそん(1953〜)]
跋:橋本喜典
装丁:和兎
四六判上製カバー装
168頁
2011.11.30刊行