◆遺句集
老鶯や朝のしじまの童子堂
秩父の荒川ほとりのせせらぎ荘に泊っての稽古会。宿の近くに葡萄畑があり、その棚の針金にも下りた霜の雫があらためて思い浮かぶ。又、二十二番札所の童子堂で夏の朝、老鶯の声を聞きながら、共に吟行した時の、あのしずけさが思い出される。
(序より:深見けん二)
◆山田閏子抄出
老鶯や朝のしじまの童子堂
鴨小屋の形それぞれありにけり
囮鴨芦間に囲ひ沼暮し
七八分なれど極まり滝桜
野馬追の殿軍者口上す
着ぶくれて少しゆとりも幸せも
日向ぼこ若き日のこと打ち明けて
加藤洲の大農たりし鯉幟
宿直と云ふ気の張りに霜の声
初春や妻に親しき話し声
*
[おのやすひこ(1939〜2010)「若葉」同人]
序:深見けん二
跋:山田閏子
装丁:奥川はるみ
四六判並製カバー装グラシン巻
184頁
2011.12.12刊行