◆硬軟自在の作風
家元の門より二人夏羽織
夏でも羽織袴というから、格式を尊ぶ宗家だろう。「二人」にドラマがある。
邂逅や肩すべらせて春ショール
久しぶりの出会い。ショールを「すべらせて」という仕草に親しい間柄が想像される。
神官の袖ひるがへし青嵐
強風をものともせず神事が進んでゆく。神官の白衣にある神々しさと涼しさ。
第一句の格式、第二句の華麗、第三句の厳粛など、硬軟自在の作風が本句集の魅力である。
(帯より:鷹羽狩行)
◆『城山』抄
家元の門より二人夏羽織
門前に降りこぼしてや松手入
日にいくたび巣箱見上げに行く子かな
昼からは富士をかくして秋の雲
またも子に負けてやりけり歌留多とり
邂逅や肩すべらせて春ショール
子の髪にさしてつらつら椿かな
天界の光まとひて落雲雀
夕東風やセーラー服の衿めくれ
神官の袖ひるがへし青嵐
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[きっかわうめこ(1929〜)「狩」同人]
帯:鷹羽狩行
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
160頁
2011.11.15刊行