◆西洋的な抒情性
身を反らしつつ白鳥の相寄りぬ
相手に自分を大きく、美しく見せるための、白鳥のディスプレーである。
ひと雨に樹の匂ひして夏館
雨でよみがえった庭木の匂いが、洋館の涼やかなたたずまいを一層際立てる。
種蒔けば土が花の名問ふごとし
種を蒔くと、土から何の花かとたずねらたような気がした。メルヘンの世界。
巻末の優れた海外吟も本句集の特色であるが、右三句にも西洋的な抒情がある。
(帯より:鷹羽狩行)
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◆鷹羽狩行抽出
身を反らしつつ白鳥の相寄りぬ
新涼や拭きかさねゆく皿の音
一寸にして貫禄の福寿草
ひと雨に樹の匂ひして夏館
茶柱もうすみどりなる新茶かな
花筏水の絵巻のはじまりし
種蒔けば土が花の名問ふごとし
駆けてゆく子らよ花野の花となれ
白夜こそよけれ古城も尖塔も
かりがねの声を飛天の笛かとも
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[いしばしまんじゅ(1936〜)「狩」同人]
序句/鑑賞七句/帯:鷹羽狩行
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
214頁
2011.10.23刊行