◆第一句集
大迫弘昭さんから句稿『恋々』を託された。これは性愛をテーマとするユニークな句集である。天明期に中興俳諧が盛んになったころ、江戸座俳諧から川柳が発展し、当然の帰趨としてばれ句の世界も展開した。俳句と川柳はそうした点でも領域を分けたのである。大迫さんの俳句はあえてその境界を越えて性的な面における人間を俳句で追及しようとしている。
(序より:矢島渚男)
◆自選一五句より
蝉時雨別々のこと言ひ出しぬ
物思ひ一日蟇になつてゐし
どこまでも汚れあぢさゐたらむとす
海開き君を隠して置きたくて
ひとづまの恋苦しくて平泳ぎ
暑気中り死んぢやふと言ふ死なぬなり
好色の他はありしか冬隣
雪来るか汝のピアスを甘噛みす
動かざるほど蝶の凍て極まれり
年忘れいまとむかしの女来る
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[おおさこひろあき(1947〜)「梟」同人]
序:矢島渚男
跋:櫂未知子
装丁:和兎
四六判並製カバー装
164頁
2011.09.04刊行