◆第一句集
海の青空の碧照る花ミモザ
「花の翼」。どんな花なのか。
私はいつの日だったか、句碑開きの際に秋櫻子先生に千鶴子さんの幼き手より渡された花束の写真を見たことを思い出した。天に放たれたそれらの花は美しい翼のように空を舞いながら、きっと千鶴子さんの思いを天上の人々に届けてくれるに違いない。
(跋より:野中亮介)
◆自選十句より
天窓より光のシャワー苺盛る
暮れてなほ空のみづいろ酔芙蓉
鍵盤に触れし残響五月闇
百合ひらくとき群青の海のいろ
光にも哀しみのいろ黄落期
レクイエム蒲公英ひとつづつ光
心にもある谷底や桜散る
胸中のとつぷり暮れて落葉焚
空似とは淋しきことば温め酒
おつもりに添へて近江の一夜鮓
*
[とくだちづこ(1949〜)「馬醉木」副主宰]
序:水原春郎
跋:野中亮介
口絵:久保守
装丁:和兎
四六判上製カバー装
232頁
2011.09.23刊行