◆第一句集
歳告ぐる手より団栗こぼれけり
愛情の眼差しが存在するのは当然であるが、それが観念的に表現されるのではなく、具体的に言い表されているところに次ね子さんの句の確かさがある。日常身辺に材を取りながら、作者らしい目くばり、心くばりが感じられるのだ。
(序より:大串 章)
◆自選十句より
春遠からじ一輪がうしろ向き
いつ唄ひ出すやも知れぬ春の月
色変へぬ松シテとなりワキとなり
祭足袋弾みゐて音無かりけり
剪定の木を囲みゐる木のしづか
サボテンの棘に冬日の刺さりけり
涼風や墨で木を描き水を描き
餅搗きの初めは語るごとくなり
八月や彫像何か叫びゐる
虫の夜の聞き洩らしたること数多
*
[ほしなつねこ(1944〜)「百鳥」同人]
序:大串 章
跋:中山世一
装丁:奥川はるみ
四六判上製カバー装
214頁
2011.09.13刊行