◆第一句集
バビロンへ行かう風信子咲いたなら
「言わなくても解ってる」と、作者からまた制止されそうである。最後の最後に置いた句が総てを語っているではないか。
風信子(ヒヤシンス)が咲こうとて、到底辿り着けない楽園(俳句の暗喩でもあるのだが)?安息国?は彼の地理学者ヘディン(Sven A.Hedin 1865 〜 1952)の見たロブ・ノール(鹹湖)の様にじっとしてはいないようだ。何を好んで、と言われそうである。不確かな手掛りを頼りに茫?たる沙漠を行くことになるのだろう。
青山茂根の?旅?は今始まったばかりである。
(序より:中原道夫)
◆収録作品より
ひよめきの閉ぢて梟帰れざる
羽ひらく孔雀のごとき湯ざめかな
蹴爪にて露の深さをはかるべし
生まれえぬ子を霙子と呼びたまふ
いつせいに星を廻せる鯨かな
冷蔵庫よりも長生きしたる猫
迷ひはじめを秋蝶の色といふ
流れつく者にトマトを差し出しぬ
最果ての地にも蒲団の干されけり
冠とするならうぐひすを幾羽
*
[あおやまもね(1966〜)「銀化」同人]
序・装釘:中原道夫
栞:櫂未知子
A5判変形上製カバー装
204頁
2011.08.22刊行