◆第一句集
さねかづら手に乗るほどの幸でよし
さねかずらはモクレン科の常緑つる性植物。山野に自生するが、葉も実も美しいので庭や垣根にも植えられる。秋になると紅い小さな実があつまって、葉がくれに垂れる。幸は掌に乗るほどの小さな幸でよいという。たとえば、さねかずらの実を見て一句が生れた。この時、生れた一句こそ小さな幸にちがいない。
(序にかえてより:成田千空)
◆自選十五句より
幾度も後ろ振り向く花野かな
路地裏に届く夕日や菠薐草
缶蹴りの缶に足置き雲の峰
ひるがへる金魚や午後の神経科
台風の近づいてゐる中也の眼
宇都宮餃子は月へ行く船か
菜箸をつなぐ細紐春三日月
日の暮れて雨大粒に三社祭
聖路加の空中廊下日雷
草千里望郷千里きりぎりす
*
[ぬまたまちす(1956〜)「萬緑」同人]
序にかえて:成田千空
装丁:和兎
四六判並製カバー装
224頁
2011.09.07刊行