■スピカで江渡華子さんが鑑賞を書かれています。
こほろぎや女の髪の闇あたたか
◆第一句集
人生というマシンガンによって蜂の巣のように弾を撃ち込まれたのが俺だ、竹岡君はそう嘯く。竹岡君はこの世を映す多面体の水晶たるべき自分を、さまざまな人々が孜々として人生を営む戦場に置いておきたいのだ。その結晶が映しだす人間模様は、実は彼自身の人生の投影でもあり、だからこそこの句集は後半に到って静かな祈りに満たされてゆく。
「蜂の巣マシンガン」─よろしい、それがあなたの美しい人生だ。
(序より:小川軽舟)
◆小川軽舟選
冬眠のものの夢凝る虚空かな
絨毯を深々と刺すハイヒール
寒鯉の鱗?ぐ音響きけり
今生は道頓堀に虫売りぬ
石榴是煉獄の色逢引す
南朝の皇女なりしが雪女
イスラムの青年に貸す夜学の書
トランクはヴィトン家出は雁の頃
海鳴の蝕む町や手毬唄
ひまはりの哄笑を聴けかつ戦へ
*
[たけおかいちろう(1963〜)「鷹」同人]
序:小川軽舟
装丁:和兎
四六判上製カバー装
226頁
2011.08.22刊行