◆<みづいろの窓>神野紗希書評 ―ぜつめつ にんげん みんな
◆閑中俳句日記(別館)に関悦史さんが『妣の国』の書評を書いて下さっています。
◆第三句集
三四歳で俳句を始めた時、身ほとりの死者は九八歳で亡くなった祖母だけでした。それから今まで、藤田湘子先生、飯島晴子さんを初め、夫の父母、私の父母、親しかった友達も幾人か喪い、死者の世界がとりわけ近く思われるようになりました。黄泉を司るのは妣神・伊邪那美尊です。「妣の国」は死者の国でもあります。
◆自選十五句より
もも色のほのと水母の生殖器
みんなみは歌湧くところ燕
あをあをと春空あふれやまぬなり
ゆふざくらみんながとほりすぎてゆく
真中より揺らぎいそぎんちやく展く
水餅は名無し孤児水を出ても
いちじく裂く六条御息所の恋
桃の在るのは人生のちよつと外
滝の前だんだんわれの居なくなる
坂道の上はかげろふみんな居る
*
[おくさかまや(1950〜)「鷹」同人]
跋:高橋睦郎
装丁:菊池信義
四六判上製カバー装
218頁
2011.06.06刊行