◆第一句集
春陰の潮目ひとすぢ相模湾
太平洋につながる相模湾を高いところから見下ろした景であるが、「春陰」という季題によって、その潮目に作者の心も宿り、大きな自然の中に生きているという感じが滲んでいる。
(序より:深見けん二)
◆自選十句
初春や応挙の虎の金砂子
灯にほのと衣紋の金糸享保雛
振りこぼす雨や夜桜騒ぎ立ち
底ひより届きし揺らぎ泉湧く
葉を滑る雨や泰山木の花
密林の闇のしたたる夕立あと
吹き降りの港となりし葉月潮
秋蝶の影追ひ虚子の小諸かな
象の背を払ひてよりの落葉掃
煤逃の四人そろひしゴルフ場
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[くわもとけいせい(1948〜)「花鳥来」会員「青林檎」同人]
序・深見けん二
装丁:君嶋真理子
四六判フランス装
216頁
2011.05.16刊行