◆第一句集
靴を手に君と歩むや鮎の川
本句集に収めた作品は、平成二十二年までの十年間。それほど長くはなく、句柄を少々心配していたが、作品を拝見し、全く杞憂に過ぎないことが分った。それどころか、「雉」の作句目標の即物具象と写生を基本にした手堅い作風で、しかも明朗闊達な世界も描き、典代俳句の明るい将来を展望させるといっていい。
(序より:田島和生)
◆自選十句より
父と酌む高脚杯や馬肥ゆる
蓋取れば睫の濡るる栗の飯
鳥引くや潜水艦にかかる綱
仙人掌や朝日とびつく銀の棘
追儺豆犬と音立て食べにけり
乳鉢に薬擂りをり春の雪
映画観て二人の頬へ冬の月
新涼や彼の大きな影の中
星飛ぶや祈りの列に我も付き
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[すずきのりよ(1972〜)「雉」同人]
序:田島和生
装丁:和兎
四六判並製カバー装
184頁
2011.03.20刊行