◆第一句集
鴨引きし濠の水面を雨の打つ
春になって鴨が北方へ帰ったあと、残った池に雨が寂しさを降りつのらせているのを繊細な感覚で描き出した。作品に鴨の姿はないが、鴨が賑やかに泳いでいた頃の池へと読者を引っ張っていく力を内蔵している。
(序より:山田六甲)
◆自選十句より
波頭崩れては引く春の潮
沖からの風に若布の干されあり
夏の夜を灯しありたる大門かな
天山を北に見上げて菱を摘む
石鹸玉口まで飛ばすごと飛ばす
山藤へ束の間瀬より光かな
麦秋や女は家で飯を炊く
観衆の眼一点大花火
鴨引きし濠の水面を雨の打つ
*
[ひさながつう(1927〜)「六花」同人]
序・山田六甲
あとがきに代えて・ことり
装丁・奥川はるみ
四六判上製カバー装
190頁
2011.03.26刊行